MENU
カテゴリー

メモとるカウンセラー・とらないカウンセラー

カウンセリング中、メモをとるカウンセラーと、とらないカウンセラーがいる。

私はメモをとらないタイプである。相談者にとってはこのあたり好みがあるようで、眼の前でメモを取られると、向き合ってくれていないと感じる人もいれば、メモを取られることで自分の話すことが形として残るという安心感を覚える人もいるようである。

メモをとらないカウンセラーが相談の記録をしないというわけではない。当然カウンセリングが終わった後に必ず記録を書く。また、メモをとるカウンセラーもリアルタイムで書いたメモとは別に、それをまとめる形で記録をつけ直す人が多いように思われる。カウンセリング中に考えたことや様子などを書くことは難しいので、そうしたことだけを終わった後に書き加える人もいる。

メモをとるかとらないかに関しては、相談する側が受ける印象に負けず劣らず、カウンセラー側に及ぼす影響も相当に大きい。たとえば、メモをとらないカウンセラーにとって、基本的に目を向ける対象は相談者だけである。カウンセラーが目を逸らせば「考えてる」「困っている」「自分の考えをまとめている」とか、何らかのメッセージとして相談者に開示されていると言って良い。その意味で、相談者と同じ条件である。お互いにフェアな条件に置かれている。

一方、メモをとる場合、カウンセラーの視線は相談者とメモ用紙の間をを言ったり来たりする。相談者が常時メモをとるということはまずないので、二人の間には条件の差が生まれる。メモをとることでカウンセラーは守られるのだが、その理由の一つがカウンセラーにだけメモをとるという作業があり、視線を向ける対象がもう一つ与えられているということにある。

となると、メモをとらないカウンセラー方が良いかというと、そうとも限らない。カウンセラーは1日に何人もの人に会うわけで、そうなると、常に丸腰で相談者の切迫した視線を浴び続けることになる。相談者は深刻な悩みを持ってカウンセラーのところに来ているので、これを真正面から受け続けるというのはなかなか大変なことなのである。それによって、後半戦で疲れてしまっていては元も子もない。もちろんそれに加えて、メモを取ったほうが正確に相談内容が記録に残るために、カウンセラーとしても余裕が生まれる。

ただ、メモをとる・とらないによって、場の構造は確実に変わる。つまり、基本的にメモというのは、「今」ではなく、その後に活用するためのものであるため、一対一で会っているリアルタイムの関係性から焦点をずらすことになる。そして、その自分自身のスタイルによって作り出された構造の中で、それぞれのカウンセラーは様々な経験を積み重ね、成長してきている。

だから普段メモをとらない人が、「今日は疲れ気味だから」とメモを取ろうと思っても、そう簡単にはいかない。それは単にメモを取るという表面的なことに収まらない、もっと根本的な相手との関係性の違いがあるからだ。メモをとろうとしても、ギクシャクしてしまったり、そのうちメモを取ることを忘れて相手の話に聴き入ってしまったりする。逆に<メモ派>の人が、メモをとれない状況に置かれた場合も、集中できなかったり、うまい応答が閃かないとかの困ったことが起きてくるのではなかろうか。

  • URLをコピーしました!
目次