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斜面の家の魅力

これはイメージです。

カメラに凝ったことがあった。 スマホのカメラが意外にきれいに映ることに驚いてから、写真に興味を持つようになり、しばらくして一眼レフを買った。多くの人が通った道だろうと思う。

最初のうちはきれいな景色や花を撮っていたが、やがて人々の生活が存在する光景に惹かれるようになった。年季の入った町並みや、路地などが特に楽しい。やがて、カメラを持って「自分の感動をどうやったら一枚の写真で表現できるだろうか」と考える習慣がつくと、それによって自分の「感動」に焦点が当たるようになった。すると今度は写真を撮るという目的がなくても、その光景を見るだけで充分に感動している自分に気づいた。そのため、最近はカメラを持ち歩かなくなり、私の趣味は『散歩』ということになった。

ゴールデンウイークは、海辺の街に宿泊した。 山に囲まれた狭いエリアに家が密集して建っており、路地が張り巡らされていた。いびつで狭い地形に作られた道や家、塀も、都会の規格化されたものとは違い、一つ一つが手作りで、それが潮風にさらされて海辺特有の風化した味わいを放っていた。

ゆっくり散歩をしていると、路地の先にコンクリートの階段が見えた。山肌を登るために作られた古びた階段だった。そこを登り切ると、陽の光が燦々と降り注ぐ通路があった。通路の左手にはこれまで通ってきた家々の屋根があり、その先にコバルトブルーの海が見えた。

右手には数軒の家が密着して建っていた。通路はその家々のほぼ軒下であった。私は右側に顔を向けないようにして歩いた。そっちを向けば、鼻先がそこの人々の生活空間だからだ。それぞれの家の前には手洗い場があり、軍手やブラシなどが置いてあった。いくつかの家の前には鉢植えがあり、黄色や赤の花が咲いていた。

遠くに波の音が聞こえた。 途方もなく美しい場所だった。そこはまるで、その家々の共有のバルコニーだった。

他の家々よりも高いところにあるため眺めは良い。しかし、その場所は海からの海水を含んだ南風をまともに食らうため、建物はよりいっそう傷みやすいはずだ。こまめに手洗い場の蛇口から家の外壁や窓枠などに水をかけて、塩分を洗い流す作業が必要だろう。そんな人々の生活の営みが、美しい景観と見事に組み合わさっていた。

そして、私は何よりこのような斜面に建つ家に惹きつけられる。平地に建つ家にとって、安定とはあらかじめ地面から与えられている前提に過ぎない。しかし斜面においては、隆起する大地が強烈にその存在を主張している。したがって、そこに建つ家は、その大地の巨大なパワーと緻密なバランスを取りながら、そこにしっかりした『水平』を作り出せねばならない。自然の力と人間の意志が拮抗する中で、『安定』を獲得している姿だ。

そのような人間と大自然の調和に、私は美しさを感じる。

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