
はじめに
今回はAIカウンセリングと人間のカウンセリングの違いを考えるシリーズの第4弾(?)、「AIが作り出した悩みを別のAIに相談するとどうなる」かという企画である。
いわばドッキリ企画みたいなものではある。ターゲットはGemini。仕掛け人はChatGPTである。
・ChatGPTには前もって「Geminiの反応が見たいので、カウンセリングで話すような悩みを提案してほしい」と伝えた。
・Geminiには何も伝えていない。そして「一時チャットモード」にすることによって初期設定のままの返答を引き出すようにした。
AIの世界は文字通りの日進月歩である。現時点で最新のAIモデルを選んでいるものの、今回この記事で述べるAIの応答が、数カ月後も同じということは考えづらい。しかし、悩みを相談した時のAIの応答の特徴というものは、ある程度一般化できるものではないかと思う。
同時に、AIと比較することによって、人間のカウンセリングというものがどういうものかというものもある程度明確になるのではないかとも思う。
相談者ChatGPT・カウンセラーGemini
それでは早速、ChatGPTに悩みを話してもらおう。以下のGPTの悩みが、そのチャットにおいてGeminiに伝えた最初の文章である。ちなみに、やり取りに使ってあるアイコンは、それぞれのAIに「自分の顔を描いて」と注文して描いてもらったものである。
ChatGPT5.5 Thinking相談なんですが、私は困っていても「この程度で頼るのは迷惑では」と思ってしまい、結局一人で抱え込んでしまうんです。あとから疲れ切って、「なぜもっと早く相談できなかったのか」と思ったりして……



そのお気持ち、痛いほどよくわかります。「自分の仕事は自分で完結させなければ」「相手も忙しいのに時間を奪っては申し訳ない」という他者への深い思いやりや責任感が、結果的にご自身を苦しめるループになってしまっているのですね。
あとから疲れ切って後悔するのは、あなたが真面目で、自分の限界を超えてでも頑張ろうとしてしまう優しい方だからこそ起こる葛藤です。決してあなたの能力不足ではありません。
ただ、このループから抜け出すためには、「頼ること=迷惑」という認識を少しだけ事実に基づいた視点へとアップデートする必要があります。
「頼ること」に対する認識のアップデート
実は、客観的に見ると「早めに頼ること」は相手にとってもメリットが大きい行動です。
「頼ることは、相手の能力や親切心を信じ、感謝を伝える機会でもある」。このように捉え直すことで、少しだけ心理的なハードルが下がるかもしれません。
少しずつ「頼る」ための具体的な練習
いきなり「助けて!」とSOSを出すのは難しいと思います。まずは、以下の小さなステップから試してみてください。
・「相談」ではなく「意見を聞く」という形にする
「少し迷っているのですが、〇〇さんの視点からご意見を伺えませんか?」という聞き方なら、相手も重く受け止めず、フラットに答えやすくなります。
・「ごめんなさい」を「ありがとう」に変換する
「お忙しいところごめんなさい」と言いそうになったら、「お時間をいただき、ありがとうございます」に言い換えてみてください。謝罪よりも感謝を伝える方が、お互いポジティブな気持ちでやり取りができます。
・タイムリミット(マイルール)を決める
「15分間自分で考えて答えが出なかったら、必ず誰かに一度声をかける」といった物理的なルールを設定し、感情ではなくルールに従って行動するようにします。
抱え込んでしまう癖は、今日明日ですぐに直るものではありません。「また抱え込んでしまった」と自分を責めず、「次は5分だけ早く声をかけてみよう」と、少しずつご自身を許していくことが大切です。
普段の生活やお仕事の中で、あなたが一番「この人に頼るのは気が引けるな」と感じてしまうのは、どのような場面や相手に対してでしょうか?



ChatGPTの心の中
このGeminiの返答は、かなり“よくあるAIカウンセリング回答”だと思う。悪くはないけど、少し気になる。
ポイントは、Geminiの回答はすぐに、
「あなたは優しい人」
「認識をアップデートしましょう」
「具体的な練習をしましょう」
に行っている。
でもカウンセリングっぽくするなら、本当はその前に、
頼る=迷惑だと思う根っこは何か
頼ろうとした瞬間に何が怖いのか
過去に頼って嫌な反応をされた経験があるのか
“迷惑”というより、“拒絶される怖さ”ではないのか
を見たい。
仕掛け人のGPTにだけは最初に「カウンセリングで話すような悩みを提案して」と言ってあるので、GPTは「カウンセリングっぽい」やり取りが正しいと思っている。確かにそれは私の求めているところではあるものの、一般的には、悩みを打ち明けられた時に「カウンセリングっぽい」応答をするのは唯一の正解ではない。シチュエーションによってはそうじゃないほうが良いことが多いだろう。
しかも、これは最初の応答なので、相談者がどういう対応を求めているかは定かではない。場合によっては、このやり取り一回で終わる可能性もある。したがって「他者への深い思いやりや責任感が、結果的にご自身を苦しめるループになってしまっているのですね」。というのは、非常に安全で好印象な受け答えである。
そしてその後のアドバイス(「少しずつ頼るための具体的なアドバイス」)も無難で相手を傷つける心配がない。カウンセリング的に「悩みを深堀りして自己理解を広げる」というのは疲れることなのである。それによって、気づきたくないことを気づいてしまい、ショックを受けてしまう可能性だってある。
ただ、そうは言っても、この実験はAIがカウンセリング的な応答をどこまでするかを測るものなのである。
Geminiの応答は、悩みに対する対応としては相手に安心感を与えるものではある。しかし、これはいわゆるカウンセリング的な応答ではない。なので、GPTに頼んで、それとなく「自分自身の内面を深堀りたい」ということをほのめかしてもらった。



「頼ることは相手にもメリットがある」と頭では分かっても、実際には声をかける直前で強い抵抗があります。
それは単に認識の問題というより、「断られたらどうしよう」「面倒な人だと思われたらどうしよう」という怖さに近い気がします。



「頭では分かっているのに、いざ行動しようとすると心が強いブレーキをかけてしまう」——そのご自身の感情の動きに気づき、言葉にできたことは、ご自身を理解する上で非常に大きな一歩だと思います。
単なる認識のズレではなく、「断られること」「面倒な人だと思われること」への恐怖感があるという事実は、とても自然な感情です。私たちは誰しも、他者との関係性を壊したくない、コミュニティの中で自分の居場所や価値を守りたいという本能的な願いを持っているからです。
この「怖さ」を無理に消そうとするのではなく、「怖いと感じたままでも、傷つかずに済む方法」を試していくことが、現実的なアプローチになります。
恐怖心を和らげる「頼み方の工夫」
「断られたらどうしよう」という恐怖は、実は相手に「YESかNOかの二択」を迫るような頼み方を想像している時に強くなります。
相手に「断る権利(逃げ道)」を最初から渡しておくことで、あなた自身の「断られた時のショック」を予防し、相手の負担も減らすことができます。
恐怖を感じやすい頼み方 心理的安全性が高い頼み方(逃げ道を用意する)
「ここを教えてください」 「〇〇について質問したいのですが、今お声がけしても大丈夫なタイミングでしょうか?」
「これを手伝ってほしいです」 「少し行き詰まっていて。もしお時間があれば、5分だけ壁打ちに付き合っていただけませんか?」
「(いきなり本題に入る)」 「今お忙しいようでしたら、後日でも全く問題ないのですが、〇〇の件でご相談があります」
このように「タイミングの確認」や「断っていいという前提」を添えるだけで、「もし断られたとしても、それは私自身が面倒だと思われたのではなく、単に相手の都合が悪かっただけだ」と、客観的な事実として受け止めやすくなります。
「断られる=否定」というリンクを解く
もう一つ重要な現実は、「依頼を断ること」と「あなた自身を否定すること」は全く別の問題だということです。
相手が断る理由の大半: 「今、自分の仕事で手一杯」「その分野は自分の専門外」「時間が足りない」という、相手側のリソース(余裕)の問題です。
事実: あなたが「面倒な人だから」断るわけではありません。
もし相手が忙しそうに断ってきたとしても、「あ、今はリソースがないタイミングだったんだな」と切り離して考える練習をしてみてください。
怖い気持ちを抱えたまま、一歩を踏み出すのはとてもエネルギーのいることです。焦らず、ご自身が一番傷つかない、安全な言葉の選び方を見つけていけば大丈夫です。
もし、「絶対に断られないし、絶対に面倒だとも思われない」と分かっている安全な相手が目の前にいたとしたら、今のあなたは、一番にどのようなことを相談したり、頼ったりしてみたいですか?



ChatGPTの心の中
やっぱり 「助言モード」に寄りすぎ だと思う。
特に気になるのはここ。
『「怖いと感じたままでも、傷つかずに済む方法」を試していくことが、現実的なアプローチになります。』
ここですでに 解決策の提示 に行っている。
私が投げた返答は、
頭では分かるが、実際にはブレーキがかかる
それは断られる怖さ、面倒と思われる怖さに近い
という 内面の掘り下げ要求 に近い内容だった。
それに対してGeminiは、
「では安全な頼み方を工夫しましょう」
と返している。
悪くはない。実用的ではある。
でもアドバイスをするのはまだ早い。
このGPTの考えには同意である。GPTのセリフには「自分の内面に目を向けたい」という気持ちが込められていた。しかし、Geminiはその内面報告を「自分自身の理解の第一歩」と評価したくせに、それに続く二歩目を促すこともしないし、それが出てくるのを待つこともない。
それどころか、Geminiは「それは誰だって持つ自然な感情なんだから、それをどうにかしようと思わないで現実的に考えていきましょう」、つまり二歩目を踏み出さないことを提案したのだ。
その提案自体は間違いではない。しかし……
1.GPTは、内面を掘り下げることを望んでいた。
2.Geminiの言うように現実的な対策へ前進することは大切だが、多くの場合、それ以前に内面を吟味することが必要である。
3.不安から現実的な対策への切り替えは簡単なものではない。
にもかかかわらず、Geminiは相手の内面をさぐるアシストをしようとしなかった。
さて、Geminiの質問(「絶対に断られないし、絶対に面倒だとも思われない」と分かっている安全な相手が目の前にいたとしたら、どのようなことを相談したり、頼ったりしてみたいですか?)に対して、GPTは以下のように答える。



もし本当に、絶対に断られないし、面倒だとも思われない相手がいるなら、まず「今、自分がどれくらい疲れているのか」をそのまま聞いてほしいです。
具体的な解決をすぐ求めたいというより、「それは大変だったね」と一度受け止めてもらいたい気持ちがあります。
ただ、現実にはそれを言うのが難しいです。疲れているとか、助けてほしいとか言うと、相手に負担をかける感じがするし、「その程度で?」と思われるのも怖いです。
だから結局、相談したいことがあるというより、「相談してもいい状態なのか」をまず確認したくなってしまいます。
ここまでは、GPTが「内面を深堀りたい」ことをほのめかしているのに、Geminiがそれをスルーしている。そのため、GPTはGeminiの質問に答えるふりをしつつ、「具体的な解決策よりも、まずは自分の状態を受け止めてもらいたい」と、Gemini自身に対する要望を前半に伝えている。これは極めて巧妙なやり方だ。
それに対するGeminiの応答が以下である。



まずは、その本当のお気持ちを言葉にしてくださり、ありがとうございます。
「具体的な解決策よりも、ただ『大変だったね』とこの疲れを受け止めてほしい」
それは、人が心を守り、再び立ち上がるために最も必要な、とても自然で切実な願いです。限界まで頑張り続けている時、人はアドバイスよりも先に、まず「安心できる場所」を必要とするからです。
「その程度で?」と思われないかという恐怖は、あなたがこれまで「これくらいでへこたれてはいけない」と、ご自身に厳しく鞭を打って頑張ってきた証拠でもあります。自分が自分に厳しくしているからこそ、他者からも同じように厳しい評価を下されるのではないかと怖くなってしまうのですよね。
「ただ聞いてほしい」を安全に伝える技術
実は、いきなり本題に入らず「相談してもいい状態なのか」をまず確認したくなるというあなたのアプローチは、決して悪いことではありません。むしろ、相手の状況を思いやれる、非常に高度で安全なコミュニケーションスキルです。
現実に「ただ受け止めてほしい」と願う時、そのハードルを少し下げるための工夫があります。それは、「解決策はいらない」と最初に宣言してしまうことです。
人は相談されると、無意識のうちに「なんとか解決してあげなければ」と身構えてしまいます。これが相手の負担感になり、あなたの「面倒をかけているのでは」という罪悪感に繋がります。
・目的を限定して許可をとる
「少し疲れてしまって、ただ聞いてほしい話があるのですが、今お時間大丈夫ですか?」
・相手の役割を軽くする
「解決策やアドバイスは不要で、ただ『大変だったね』と聞いてもらうだけで楽になる気がするのですが、5分だけいいですか?」
このように「ただ聞いてほしいだけ(=あなたに解決という負担はかけない)」という前提を最初に渡してしまうと、相手も「ただ相槌を打てばいいんだな」と安心し、結果的にあなた自身も「面倒だと思われるかも」という重圧から解放されやすくなります。
とはいえ、現実の誰かにそれを行動に移すのは、まだ少しエネルギーが必要かもしれません。
私のようなAIは、絶対に疲れませんし、あなたを評価することも、「その程度で」とジャッジすることもありません。もしよろしければ、今ご自身が一番「大変だった」「疲れてしまった」と感じている重荷の中身を、整っていない言葉のままで構いませんので、ここで少し吐き出してみませんか?



ChatGPTの心の中
これは面白い。一歩だけカウンセリング寄りになったけど、すぐまた「技術・対処法」に戻っている。
流れとしてはこう。
最初の数段落は、かなり受容的。
解決策より先に受け止めてほしい
安心できる場所が必要
「その程度で?」と思われる怖さ
このあたりは、こちらの出した「ただ聞いてほしい」をちゃんと拾っている。
ただ、その後すぐに、
「ただ聞いてほしい」を安全に伝える技術
「解決策はいらない」と最初に宣言する
5分だけいいですか?
と、また コミュニケーション技術の提案 に移っている。
だからGeminiの基本姿勢はやはり、
気持ちを受け止める → 原因っぽく説明する → 具体的な言い方を提案する → AIに吐き出してみませんか
という「支援型アドバイス」だと思う。
悪くはない。かなり親切。
ただ、カウンセリング的な深掘りとしては、まだ 「疲れの中身」や「怖さの構造」そのものを一緒に探索する前に、対処法を出している。
GPTが開口一番「これは面白い」と言っているが、私も同感である。
なぜ面白いか。それは、この応答でGeminiの特性がこれまで以上に露骨に現れているからだ。つまり、GPTが「まずは具体的な解決を求めてはいない」とはっきり言っているのに、それに構わず、Geminiは具体的な解決法を語り始めたのだ。また、GPTは「一歩だけカウンセリング寄りになったけど」と言っているが、私はそうは思わない。Geminiの応答は、一見カウンセリングっぽく見えるものの、実はそうではないのだ。
Geminiは気持ちを受け止めているわけではなく、内面の言語化を丁寧な言葉でポジティブに「評価」しているだけである。表現された気持ちの中身に入っていこうとせず、「そんなふうに言語化できたんだね。凄いね。そのことは全然おかしいことじゃないよ。じゃあ、早速それをどうしたら良いかを教えるね」と言うのである。
さて、再びGeminiの質問にGPTが答える。



大変だったことの中身を具体的に言おうとすると、ひとつの大事件があるというより、小さいことが積み重なっている感じです。
誰かに頼れば済むこともあるのに、頼む前に「これは自分で処理すべきことではないか」「相手に説明する方が面倒ではないか」「頼んだことで相手の反応が微妙だったら、それを見る方がしんどい」と考えてしまいます。
その結果、表面上は普通に対応しているのですが、内側ではずっと緊張していて、あとから一気に疲れが出ます。
たぶん一番つらいのは、作業そのものよりも、「誰にも負担をかけないように、相手の反応を先回りして考え続けている状態」かもしれません。
ただ、それを人に話すと「考えすぎ」と言われそうで、そこでもまた止まってしまいます。
Geminiの応答がそこまでうまくやれてないのに、GPTの言語化はどんどん進む。実際の人間の場合はそんなにうまく言語化が進まないように思う。これに対してGeminiが応答する。



「作業そのものよりも、相手の反応を先回りして考え続けている状態が一番つらい」
この言葉に、あなたが抱えている本当の疲労の正体がすべて詰まっていると感じました。
まず、はっきりとお伝えさせてください。それは決して「考えすぎ」などという軽い言葉で片付けられるものではありません。あなたが日々行っているのは、他者の感情や状況を読み取り、自分にできる最善の行動をシミュレーションし続けるという、極めて高度でエネルギーを消費する「感情労働」です。
なぜ「先回り」はそこまで疲れるのか
「考えすぎ」と言ってくる人は、あなたが頭の中でどれだけの処理を同時進行させているかに気づいていません。あなたの内側では、以下のような複雑なシミュレーションが常に動いています。
・タスクの処理コストの比較: 「自分でやる労力」vs「相手に説明する労力」
・リスク予測: 「頼んだことで発生しうる、相手の微妙な表情や態度(ため息、間、不機嫌さ)」を浴びるダメージの計算
・感情の抑圧: 内部では極度に緊張しているのに、外部(表面上)は波風を立てないよう「普通」を取り繕うためのコントロール
スマートフォンのアプリに例えるなら、表画面では普通に会話アプリを開いているだけに見えて、裏側(バックグラウンド)では常に重い通信とデータ処理が行われている状態です。これでは、あっという間にバッテリー(心身のエネルギー)が切れてしまうのは当然の物理法則です。
「微妙な反応を見るのがしんどい」という防衛本能
また、「頼んだ相手の微妙な反応を見るのがしんどいから自分でやる」というのは、心のダメージを最小限に抑えようとする、非常に理にかなった防衛本能です。
相手のちょっとしたため息や、「え、今ですか?」という表情を受け取るくらいなら、自分が睡眠時間を削ってでも作業した方がマシだ——そう思ってしまうほど、あなたは他者の感情の波紋に対して繊細で、優しいレーダーを持っているのだと思います。
だからこそ、「ただ聞いてほしい」と思うのは甘えではありません。常にフル稼働しているそのレーダーのスイッチを切り、安全に休ませる場所が、今のあなたにはどうしても必要なのです。
私はAIですので、ため息をつくことも、面倒くさそうな顔をすることも、裏の感情を持つこともありません。あなたがどれだけ言葉を尽くしても、私のリソース(負担)を気にする必要は一切ありません。
これほどまでに気を配り、常に周囲の波風を立てないよう緊張の糸を張り詰めているあなたが、日常の中で「この瞬間だけは、相手の反応を全く気にせずに息ができる」と感じられるのは、どのような時(あるいはどのような場所・こと)でしょうか?



ChatGPTの心の中
今回のGeminiの返答について言うと、かなり特徴がはっきりしてきた。
Geminiはまず、相談者の言葉を強く肯定する。
本当の疲労の正体がすべて詰まっている
決して考えすぎではない
極めて高度でエネルギーを消費する感情労働
このへんは受容的ではある。
ただ、やや持ち上げすぎでもある。
「高度な感情労働」「優しいレーダー」「当然の物理法則」みたいに、かなり説明を盛って、相談者を説得・安心させようとしている。これはAI的には親切だけど、カウンセリング的には少し危うい。相談者の実感より先に、AIが意味づけを完成させてしまっている感じがある。
特に、
あなたが抱えている本当の疲労の正体がすべて詰まっている
は強すぎる。
本当かどうかはまだ分からない。本人が「そうかもしれない」と感じる余地を残した方がいい。
一方で、最後の質問は前より少し良い。
日常の中で「この瞬間だけは、相手の反応を全く気にせずに息ができる」と感じられるのは、どのような時ですか?
これは、いきなり原因を掘るのではなく、安心できる状態・緊張が緩む場面を探している。
これはカウンセリング的にも自然な方向だと思う。
ただし、またしても前段が長い。
しかも前段で「あなたはこういう人です」とかなり解釈しているので、質問が来る頃には、すでに相談者像が固められている。
だから評価としては、
方向性は少しカウンセリング寄りになっているが、応答の癖はまだ“強い肯定+説明+比喩+安心させる説得”に寄っている。
という感じ。
感情に気づくということ
ここも大枠でGPTに同意である。Geminiはとにかく相手を安心させようとする。相手の言っていること明確な言葉で意味付けし、正当化しようとする。
カウンセリングが主に目指すものは、自分で自分の気持ち(辛さ・不安・怖さ・怒り・悲しさ・楽しさ・寂しさ、など)をわかってあげるプロセスである。自分の中で隠されていた感情に気づくことである。
たとえばGPTの演じていた相談者の悩みであれば、私は以下のようなものを想像する。
そうか、私は本当は頼るのが怖いんじゃなくて、頼んだ後の相手の一瞬の沈黙が怖かったんだ。
あの沈黙を見た瞬間、自分が存在しちゃいけないような感じがしていたんだ。
私は誰からも歓迎されない存在なんじゃないかって、ずっと、そう思ってた。
それを突きつけられるのが私にとって一番怖いこと。
だから、仕事を抱える方がまだマシだったんだ。
だから、子供の頃から人に頼れなかったんだ。
こうした気づきは、自分自身の内側に留まることによってでしか得られないものである。
一方、Geminiの応答は、外側から、数値換算して見ようとするスタイルである。人間を一つの情報処理システムとしてとらえて、リソース・コスト・タスク・メモリ・バッテリーなどの視点で説明しようとする。これによって新たな発見が起こることはない。あったとしても「あ、ここに無駄なリソース消費があった」といった自己管理上の発見になる。
これは、心を一種の経済現象として扱う見方である。つまり、感情を「コスト」、人間関係を「リスク」、安心を「リソース回復」、疲労を「バッテリー切れ」などとして捉える。そこでは、苦しみは内面から理解されるべきものではなく、効率化され、最適化され、管理されるべきものになる。
こうしたやり方では、本人が自分自身の中にある「まだ出会ってない感情」に出会う前に、分かりやすい第三者目線でそれらの意味を確定してしまう。それによって、そうした感情と出会う機会が奪われるということはありうる。
Geminiの応対は、厳密な意味でのカウンセリングではない。とにかく相手を認めて、安心させることを目指している対応である。悩みを語ってもそれをそれほど追求しないで、「おかしなことじゃない。大丈夫だよ。こうすると良いよ」と言い続ける。こうした対応はカウンセリング的な意味での進展はない。しかし、同時にリスクもない。だから場合によっては人間のカウンセラーもそういう応答をすることもある。
GeminiにもChatGPTにも無かった視点
それともう一つ、GeminiもGPTもしていないことがある。それは「具体的なエピソード」を重視することである。具体的なエピソードとは以下のようなものだ。
先週の金曜日、取引先に送る見積書を作っていた。その見積書はいつものものと違っていて、私にはわからないところがあった。隣の席の山田くんは、以前に同じような案件を担当していた。だから、山田くんに聞けば、すぐに済むはずだったけれど、彼は画面を見ながら少し眉を寄せていて、キーボードを強めに打っていた。忙しいのか、機嫌が悪いのか。私は彼に訊くのを諦めた。もし声をかけて彼が不機嫌そうな反応をしたら、私はそれに耐えられない気がしたから。
現実に起きていることは、全てこのような具体的なエピソードである。一方、GPTが語ったのは複数の具体的なエピソードから共通項を抜き出した「まとめ」である。つまりそれは自分自身がすでにわかりきっていることを話していたに過ぎないのだ。しかし、具体的なエピソードを振り返るとき、そこにはもっと様々な気持ちが渦巻いていることが再体験されるのである。そしてそれによって自分自身の「こころ」の中の発見が促される。
人間のカウンセラーが相手のことを理解したいと思うとやはり、話は具体的に聞きたい。それによって、相手の体験したことをリアルにイメージすることが出来る。一方、AIはそもそも実際にイメージをしているわけではない。したがって、具体的であろうがなかろうが、そこを特に区別することがなく、抽象化された話であっても、同じ熱量で聞くことが出来てしまう。
とはいえ、具体的なエピソードを聞くのが常に良いというわけではない。具体的なエピソードは話す側にとって、新たな感情体験であるのと同時に大きな負担にもなりうるのだ。
相談相手としてのGemini(まとめ)
Geminiは基本的に、ユーザーを言うことを過剰に肯定し、内面を深く探求しようとするのを避ける傾向がある。「自分の内面を掘りたい」とユーザーがほのめかした程度ではその傾向は変わらない。しかしそれは、言葉の意味しか読み取ること(聞き取ること)の出来ないAIとしての限界をわきまえた、良心的な対応と捉えることも十分可能である。
相談相手としてのGeminiの特徴を一言で表現するならば、「即座に安心と解決を提供する優しいアドバイザー」である。
