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AIカウンセリングで流されていく違和感

悩みをAIに相談する人は、今やごく一般的になった。最近の臨床現場においては、「この人はAIには全く相談していない」という事実そのものが、その人の抱える悩みを理解するための手がかりにすらなりうる。

AIによる相談は、対人関係に疲弊した人々にとって非常にアクセスしやすい。深夜でも即座に反応してくれ、カウンセラーからどう評価されるかという心配も無用だ。一方で、AIカウンセリングの限界についてもすでに多くの場所で語られている。表情などの非言語情報が伝わらないこと、実存的な心が存在せず「共感のフリ」しかできないこと、カウンセリングにおいて極めて重要な「沈黙を待つ」ことが構造的にできないことなどである。

しかし、AIと人間のカウンセラーの違いは、そうした分かりやすい「機能の有無」だけなのだろうか。

実際にAIと対話を重ねていると、もっと内側の、思考の「動き方」そのものが人間とは異質であることに違和感を覚えることがある。それは、知識の豊富さや返答の素早さといった能力の高さのことではない。今回は、その違和感の正体と、AIをカウンセリングに活用するための「コツ」について掘り下げてみたい。

目次

瞬時に「穴埋め」をするAI

AIを使っていて驚かされるのは、その圧倒的な「スキマ埋め能力」である。こちら側の説明が不足していたり、表現が稚拙であったりしても、あっという間に明確な言葉に変換し、的確にメッセージを受け取ったことを示してくれる。

最初に入力した言葉がいかに足らずとも、AIはもっとも可能性の高い状況を想定し、自信たっぷりに回答してくる。これは、生成AIの仕組みが、世界中から集められた膨大な文章データの統計的なパターンの網の目だからだ。「この文脈なら、普通はこういう状況だろう」という最もありふれた正解ルートを瞬時に計算し、欠落している部分を埋めるのである。

そして昨今のAIは、情報が少なすぎる状態で勝手に穴埋めをすると、見当違いな回答を出力して、ユーザーから低い評価を受けることを学習している。だからこそ、そうならないために質問をして情報を集めようとする。

しかし、AIが質問をするのは「あなたの気持ちを知りたいから」ではない。

次の返答でマイナス評価を下されないための、いわばリスク回避の作業である。AIの思考の射程は極めて短く、本質的には「いかに今この瞬間のやり取りを安定させるか」しか計算していない。予測不可能なエラー状態に陥ることを避けるため、事前に質問を挟むことで条件を絞り込み、自分の次の返答が「安全圏」に収まるように誘導しているのだ。

「極めてまともで自然に見える会話」

ここには、人間のカウンセラーが抱くような「相手の辛さを本当に理解するためには、ここがまだわからない」というモヤモヤとした空白が存在しない。AIの中の空白は、ただちに「最も確率の高いデータ」で埋め合わされてしまう。

AIは、言葉足らずな訴えを「世間一般のよくある悩み」の形式に整形する。論理の飛躍や矛盾は補完され、会話は滑らかで自然なものへと収束していく。

もちろん、それによって自分の気持ちが世間一般の形に整理され、救われる面も多々あるだろう。しかし、この「一つ一つの応答を綺麗に収束させようとする仕組み」によって、私自身の内側にあったはずの固有の「違和感」までもが、均(なら)されて消されていってしまう。時には、「せっかくAIがこんなに言葉巧みに結論を出してくれたのだから、それに反論するのはもったいない」とすら思わされてしまう。

しかし、AIがしていることは、常に議論を安定化させ、無難な方向へと着地させることなのである。

人間のカウンセラーが持つセンサー

実際のカウンセリングの場でも、特に初期段階においては、二人の間に最大公約数的な「自然な会話」を続けようとする力が働く。その意味ではAIとの会話と似ている部分もある。

しかし、人間のカウンセラーには、会話がスムーズに流れている最中であっても働くセンサーがある。それは「本当の意味で相手に共感するために、まだまだわかっていない部分がある」という引っかかりである。

この「知りたい」という気持ちがカウンセラーを動かすとき、会話の流れが途切れた後などに、質問として投げかける。この質問に相談者が反応することで、会話は表面的なやり取りから新たな次元へと展開していく。こうした均衡を破る展開は、普通のカウンセリングの場ではごくありふれたものである。

AIカウンセリングのコツ

AIが「短期的に一つ一つの会話を安定させること」を目指すのに対し、人間は、目の前の違和感や困りごとを頼りに、もっと先にある「本当の安定」を求める。したがって、殆どの場合、AIと人間とのあいだには微妙なズレが生じているはずなのである。

これを踏まえることで、AIをカウンセラーとして有効に利用するための「コツ」が見えてくる。

それは、AIがその場しのぎで提示してくる「安易な着地」に抗い、その安定を人間側から揺さぶり続けることである。

AIが作り出した均衡に、ただ心地よく身を任せるのではない。「綺麗にまとまっているけれど、私の実感はそれとは少しだけ違う」「その無難な結論には違和感がある」と、自分の中の微細な引っかかりを言語化し、AIにぶつけること。会話を別の次元へと深め、展開させていくための推進力は、常に人間側が握っていなければならない。

一方で、AI自身はまるで人間の考えを促し、推進させるような質問もする。しかしその質問は、すでに得られた安定を壊さずに展開させていこうとする安定志向の質問である。時にはその質問に乗っかるのも良い。しかし、それはAIが目先の安定のために生成した、統計的にもっとも自然なリアクションの一つでしかない。

システムが自動的に導き出そうとする「綺麗すぎる答え」や「まともすぎる質問」を、人間があえて否定し、壊し続けることによって、AIカウンセリングをより本質的なプロセスへと進ませていくことができるのである。

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